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2019年7月2日

勤務間インターバル制度を活用しよう!(弁護士中川)

中川亮弁護士が執筆した法律コラム「勤務間インターバル制度について」が東京ユニオンの機関誌GU6月号に掲載されました。以下、ウェブ用に編集したものです。

 

勤務間インターバル制度を活用しよう!           

勤務間インターバル制度とは?

 「勤務間インターバル制度」とは、労働者の睡眠時間や休憩等を確保する目的で、前日の終業から翌日の始業までの間に一定間隔を設けることを、使用者に求めるものです。働き方改革関連で改正された労働時間等設定改善法2条1項で、「事業主は,その雇用する労働者の労働時間等の設定の改善を図るため、業務の繁閑に応じた労働者の始業及び終業の時刻の設定、健康及び福祉を確保するために必要な終業から始業までの時間の設定、年次有給休暇を取得しやすい環境の整備その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない」と規定され、改正法が本年4月1日に施行されました。

 例えば、会社がインターバルの時間を10時間に設定していたとすると、労働者が午後10時(22時)に仕事を終えた場合、翌日、当該労働者が業務を開始する時間は午前8時以降でなければなりません。

 

残業で遅くなったときは始業を遅らせることが可能に

 この制度の狙いは、残業で遅くなった場合に翌日の始業時間を遅らせることで、労働者の睡眠時間確保や心身の健康保持を図り、ひいては、労働者のワーク・ライフ・バランスの確保と事実上の長時間労働の防止を目指すものです。

 同じ働き方改革の中で改正された労働基準法では、時間外労働の上限規制が課せられることになりましたが、この規制は月単位・年単位の規制のため、勤務間インターバル制度を導入することによって、日単位・時間単位での短期間の集中的な過重労働・健康被害を予防する効果が期待できます。

 

ヨーロッパでは広く導入されている

 勤務間インターバルはヨーロッパでは広く導入されていて、EUでは、1993年のEU労働時間指令で、「24時間につき最低連続11時間の休息時間」を設けるという決まりになっています。特にドイツでは、1938年に導入された歴史があります。

 

努力義務ではあるものの過重労働を防ぐために有効な制度

 これに対し、日本では、前記の条文からも明らかなように、現状では、勤務間インターバルの制度化は事業主の「努力義務」にとどまっています。会社や事業主が勤務間インターバル制度を実施していない場合でも、ペナルティは科されません。

 一連の働き方改革の流れの中で、通信大手のソフトバンクのように、全社員を対象に、終業から次の始業までに10時間以上の連続した休息時間を取ることを義務付けると発表する企業も出てきてはいますが、企業側の動きは鈍く、厚生労働省が公表した「平成29年就労条件総合調査」によると、勤務間インターバルを導入している会社が1.4%であったのに対して、導入の予定はなく、検討もしていないと回答した企業は、92.9%にものぼっています。

 勤怠管理が複雑になるので敬遠しているとの見方がありますが、労働者側にとって、改正労基法ではカバーできない、短期レンジでの過重労働を防ぐために有益な制度であることは間違いないので、労使間で、導入について議論するに値する制度です。

 

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