事件例

2017年6月28日

昭和シェル石油・男女賃金差別事件

大手石油元売り会社の昭和シェル石油株式会社が、元女性社員に対して、女性差別がなければ得られたはずの賃金・賞与・退職金、既払い及び将来の年金の差額分の損害と慰謝料として、約2051万円の支払いが命じられた事案

弁護士 古田典子

 原告女性Xさんは、1932(昭和7)年生まれで、19歳で旧昭和石油に事務職として入社後、5年後、和文タイプ業務に配置転換され、20年間和文タイプ専任となりました。Xさんは、和文タイプ以外の仕事がしたくなり、英語学校に通い、英文タイプやテレックスなどへの職務変更に成功しました。1985(昭和60)年の昭和石油・シェル石油の会社合併時、当時52歳・勤続33年だったXさんは、新しく会社が採用した職能資格精度において、高卒男性であれば22歳で格付けられる資格に格付けられました。この資格には納得できないとXさんが上司に抗議したところ、翌年1ランク昇格しましたが、その後は昇格しないまま60歳の定年で退職しました。

 Xさんは、旧昭和石油が、男性のみを年功的に昇給・昇格させて生活給を保障し、女性はそこから排除することで女性に賃金差別をしたこと、1985年の合併の際に男性は昇格、女性は降格する方向で格付けしたことも男女差別であること、昭和シェル石油の職能資格制度においても、男性を女性より優遇する扱いをしたことは、男女同一賃金を定めた労働基準法4条に違反する不法行為であると主張しました。

 これに対して、会社は、男女の格差は勤続年数の違いから担当職務や発揮する能力が男女で異なるためで、男女差別ではないと主張しました。

 東京地裁の一審判決は、9年間の審理の後、会社の弁解は「到底採用することができない」として、賃金、退職金、年金の差額など約4500万円の支払を命じました。

 控訴審では、会社は、1985年の合併時に廃棄したと主張していた多数の証拠を、態度を翻して提出しましたが、一方で、原告の請求の多くは消滅時効にかかっていると主張しました。

 東京高裁の控訴審判決は、1985年の合併の際に、Xさんを同じ資格の男性社員よりも低い資格とし、その後も1段階昇格させただけに留めたことは、女性であるがゆえの賃金差別(労働基準法4条違反)であって故意による不法行為であること、改正前の雇用機会均等法8条でも、事業主は、男女労働者の「昇進」における均等取扱いの努力義務が規定されており、「昇進」について女性を男性と「均等な取扱いしないことを積極的に維持」したことは違法であると判断しましたが、提訴から3年以上前の損害は消滅時効にかかっているとして、賠償金は2051万円余り及び遅延損害金に減額しました。

 この判決は、上告審でも維持され、昭和シェル石油は、Xさんに対し、判決通りの賠償金を支払って解決しました。

 長谷一雄弁護士(その後東京共同を独立)と私とで担当した事件です。

 東京地裁2003年(平成15年)1月29日(労判846-10)

 東京高裁2007年(平成19年)6月28日(労判946-76)

 最高裁2009年(平成21年)1月22日(労判972-98)

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