事件例

2017年6月28日

エクソンモービル事件
 団体交渉拒否について組合員個人の損害賠償を認めた事例

東京地裁平21年1月28日判決
東京高裁平24年3月14日(労働判例1057号)

誠実交渉義務に違反していると認められる場合、組合員個人も損害賠償を請求できるとした事例

弁護士 宮里邦雄

(事案の概要)
 長年にわたって専門職と事務・技能職は同一の支給基準により一時金を支給されてきたが、会社が一時金支給月率に格差を設ける提案をし、格差のある支給をしたことに対し、格差支給は違法であり、同一支給月率により支払われるべきであるなどとして事務・技能職の組合員22名が提訴した。
 一審東京地裁平21.1.28判決は、格差支給は違法ではない、不法行為による損害賠償責任もないとしたが、本件東京高裁判決は、格差支給の違法性は認めなかったが、格差支給を提案した一時金にかかわる団体交渉は不誠実であったとして、不法行為の成立を認めた。

(判決の内容)
 「会社の態度は、事務・技能職の一時金支給基準についての協議において組合との実質的な労使交渉を拒んだものと評価すべきであり、労使交渉過程における誠実交渉義務に反するというべきである。その結果、事務・技能職に属する組合員らは、従前存在しなかった専門職との一時金支給率の格差という不利益な自らの労働条件について、実質的に検討した上で会社側と交渉する機会を奪われたというべきであり、このような機会の喪失は、保護に値する法的な利益に対する侵害であると評価でき、会社はこれによる組合員らの損害を賠償すべきである」と判断し、各組合員に損害の支払を命じた。

(本判決の意義)
 使用者の正当な理由のない団体交渉や不誠実交渉に対して、労働組合は、労働組合法7条2号の不当労働行為として労働委員会に救済を求めることができるが、一方裁判所に対しても、不法行為(民法709条)による損害賠償を請求することができ、不法行為による損害賠償を命じた判決は少なくない。
 本判決の特色は、不誠実交渉を理由に、組合員個人について損害賠償請求を認めた点にあり、この点では初めての判決である。
 判決が指摘するとおり、不誠実交渉の結果、被害を受けるのはほかならぬ組合員であり、団体交渉が組合員のために行われるものであることからすれば、判決が述べるところは正しい。
 これまで団体交渉に対する損害賠償請求は労働組合が原告となって提訴していた。事案にもよるが、今後は、組合員個人も組合と共同で原告となって損賠請求訴訟を提起することが検討されることになろう。

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