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2019年1月21日

エアコン室外機からの出火による損害賠償請求事件の勝訴判決について

エアコン室外機からの出火による損害賠償請求事件の勝訴判決について

                                                                                                              弁護士 河邉優子

 

 みなさんは、ご自宅のエアコンの室外機の中がどうなっているのかご存じですか?

 電化製品に詳しい方でも、エアコンがどういう状態のときに、室外機のどの部分にどの程度の通電が生じているかまで知っている方はまずいないでしょう。ましてや、火災でボロボロに焼損した室外機について、そのうちのどこから、どのように発火したのかを詳細に証明することなど、通常はできません。それなのに、室外機に欠陥があってそこから出火して火災になったというためには、室外機のいかなる部位からいかなる機序で発火したかを常に原告が詳細に証明しなければならないとしたら・・・焼損の被害が大きければ大きいほど、被害は救済されないという不公平な結果になってしまいます。これでは火災や事故を防げません。

 そこで、これまで、被害者救済のために様々な工夫がされてきました。最高裁判所も、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうる程度に立証出来ていれば良い旨述べています。

 ここでご紹介する判決は、この最高裁判決に従ったものです。本判決では、ベランダ以外の場所からの出火可能性を細かく検討して否定し、出火場所をベランダに絞りました。そして、ベランダにある室外機の冷却ファン電動機に短絡が生じて発火源となった蓋然性があることを認定しました。また、ベランダにおけるその他の出火源が室外機以外には考えられないと認め、「本件火災の発火源が本件室外機であることは、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものに至っている」と結論づけました。

 現在は控訴審係属中ですが、正しい判断が維持されるよう引き続き取り組んで行きます。

 

 【事案の概要】

平成24年10月、千葉県内にある教会兼住居である2階建て建物から火災が発生しました。消防の調査の結果は、ベランダに設置されたエアコン室外機からの発火の可能性があるが、近くの子供部屋からの発火の可能性もあり、いずれか決めかねるというものでした。

しかし、子供部屋には発火可能性のあるものはありません。火災発見時の状況や、火災後の各部屋の焼損状況からしても、エアコン室外機からの発火としか考えられませんでした。そこで、被害者一家は、交渉及び弁護士会のあっせん仲裁を経て、エアコン室外機のメーカーであるダイキン工業株式会社に対して、製造物責任法に基づき損害賠償を求める裁判を起こしました。

 

【裁判での争点】

被告であるダイキン工業株式会社は、エアコン室外機からの発火を全面的に争いました。

そのため、発火源がエアコン室外機であるか否かが争点となりました。

同時に、発火源がエアコン室外機であることについて、原告側が、いかなる点をいかなる程度に主張立証しなければならないかも問題になりました。

 

【判決の内容】

 平成30年9月19日 東京地裁判決(判例集未搭載)

 事件番号 平成26年(ワ)第29176号

判決は、まず、出火場所の検討として、焼損が比較的激しい部屋を1つずつ挙げて各部屋からの出火の可能性の有無を検討し、「2階ベランダの本件室外機周辺が出火場所であることが高度の蓋然性をもって認められる」と認定しました。

次に、2階ベランダ内における発火源の検討として、まず本件室外機からの発火可能性を検討し、冷却用プロペラファン電動機(実況見分時には存在しなかったため、その異常の有無は確認されていない)周辺の焼損状況を具体的に認定して、「このように、本件室外機は、特に左側の上記ファン電動機部分が激しく燃焼・焼損したことが認められるところ、当該部分を構成する部品で、通電があり、発火の可能性がある電気系統部品は、ファン電動機だけである。」こと等を認定し、「本件室外機の冷却ファン電動機に短絡が生じ、発火源となった蓋然性」を認めました。

最後に、判決は、2階ベランダ内における本件室外機以外からの出火の可能性を検討し、「本件室外機の外部に発火源が存在したことは具体的に想定し難」いと述べ、「本件室外機以外に発火源となり得るものは想定することができない一方、本件室外機内部が発火源となった蓋然性を示す事情は、これを認めることができる」ので、「本件火災の発火源が本件室外機であることは、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものに至っている」とし、本件火災の発火源は本件室外機であると認定しました。

加えて、本件室外機の使用期間の短さや通常と異なる方法で使用した事情は認め難いことから、「本件火災は、被告の製品である本件室外機の欠陥により生じたものと推認することができる」として、被告に製造物責任法3条に基づく損害賠償責任を認めました。

 

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