品川美容外科の「糸によるフェイスリフト術」和解成立
2017年12月6日
花垣 存彦
品川美容外科・品川スキンクリニックにおいて,強引な勧誘がなされ,施術の効果持続期間や合併症についての十分な説明を行わないまま,吸収糸リフト術が実施され,リフトアップの効果がほとんど見られなかったのみならず,側頭部や顔面の疼痛・皮膚の引き攣れ・脱毛といった健康被害が生じたという相談が多数寄せられ,2014年以降3回にわたって東京地裁に集団訴訟を提起しました。
本日,民事訴訟において,被告との間で和解が成立しましたので,ご報告します。
※吸収糸リフト=特殊加工された糸を特殊な針を使って皮下組織に埋め込む手術で,それによって,皮下組織でたるみを持ち上げる施術方法がとられる。
1 提訴後の経緯
2014年4月23日 第1次提訴(請求額約2400万円。民事14部に係属)
(20代~50代の女性13名。関東近辺在住)
2014年10月30日 第2次提訴(請求額約8600万円。民事14部に係属)
(20代~60代。女性37名,男性3名。ほぼ全員が関東近辺在住)
2015年5月26日 第3次提訴(請求額約4600万円。民事30部に係属)
(20代~70代。女性19名,男性1名。ほぼ全員が関東近辺在住)
その後,翔友会が施術代金請求訴訟を提起し,損害賠償請求の反訴を提起(2名)
2016年4月~6月 証人尋問(被告クリニック医師6名),本人尋問(第1次原告全員)
2017年12月6日 75名全員について和解成立
2 訴訟の争点
①効果の程度及び持続期間,合併症についての説明義務違反
②既払いの手術代金について消費者契約法による取消,錯誤無効
3 和解条項
①和解金額
守秘条項を入れています。(非開示)
②再発防止条項等
本件の解決に当たり,原告団・弁護団としては,損害賠償だけでなく,本件紛争を糧として同種被害の再発防止に向けた取組みを求めてきました。その結果,以下の条項が入りました。
ア 遺憾の意を示す条項
「被告は,本件紛争の発生及び経過を重く受け止め,原告らに対し,遺憾の意を表する。」
イ 再発防止条項
「被告は,被告の医院における説明内容(特に,施術の内容・方法や効果の点)について原告らから問題点を指摘されたことを真摯に受け止め,改めて,患者の自己決定の前提となる必要十分な説明及びこれに基づいて熟慮した患者の自己決定を尊重することの重要性に思いを致し,より良い医療の提供に努めることを約する。」
4 厚生労働省・学会等への要請
和解成立を踏まえ,厚生労働省・学会等へ要請活動を行いました。