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2020年1月15日

2019年12月26日付死刑執行に対する抗議の記者会見(弁護士海渡)

監獄人権センターが他の人権団体とともに今日の死刑執行に抗議の記者会見

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第二次安倍政権で39人目の死刑執行

 本日、森雅子法務大臣の命令により、魏巍(ウェイウェイ)氏(福岡拘置所)に対する死刑が執行されました。監獄人権センターは、添付の声明を発し、アムネスティ・インターナショナル、死刑をなくそう市民会議、被害者と司法を考える会、フォーラム90、「死刑を止めよう」宗教者ネットワークとともに議員会館で記者会見を開催しました。

 この会見でわかったことも含めて、以下にご報告します。
 今日の死刑執行は、第一次安倍政権以降39人目となります。臨時記者会見で森雅子法務大臣は、「死刑は人の生命を絶つ極めて重大な刑罰であり、執行に際しては慎重な態度で臨む必要がある」「法治国家においては、確定した裁判の執行は厳正に行う」という、あらかじめ法務省が用意したフレーズを繰り返し読み上げるのみに終始しました。

魏巍(ウェイウェイ)氏の事件とは、どのような事件か?

 この事件は、Wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/福岡一家4人殺害事件)によれば、「2003年6月20日に、福岡県博多湾で4人の遺体が発見された。遺体には首を絞められた跡があり、捜査の結果4人の遺体は近くに住む一家のA、Aの妻、Aの子供二人のものと判明した。 発見現場近くの目撃証言と、犯行に使われた手錠とダンベルが販売された店舗の防犯カメラの映像から3人の容疑者が割り出されることとなった。3人は一家4人を車に乗せて、手錠をはめて遺体を海に沈めていた。犯行グループのうちXとYは中国に帰国していたが、中国公安当局の協力により逮捕起訴された。一人については別件で警察に拘束されていた。」とされる事件です。
 フォーラム90からの情報によれば、魏巍(ウェイウェイ)氏は、貿易を学びたいと2001年に来日し、日本の大学を二度受験したが失敗し、多額の資金援助をしてくれた親にも頼れない状況で、知り合いから誘われて犯行に加わったということです。
 このように、三人の共犯者がいるとされ、二人は逃亡先の中国で逮捕され、主犯は中国で死刑とされ、処刑されています。他方で、誘われて犯行に加わった、魏巍(ウェイウェイ)氏と同じような立場の共犯者は、捜査に協力したなどの理由で無期刑となっているようです。

再審請求中の執行

 森大臣は死刑の存廃について、「各国において独自に決定するべき」と述べましたが、魏巍氏が再審請求中であったかどうかについては頑なに回答を拒否したことは監獄人権センターの声明でも指摘しましたが、フォーラム90からの情報提供によれば、審級まではわかりませんが、実際に再審請求中だったようです。
 再審請求中の死刑執行は、係属中の事件について司法判断を受ける死刑確定者の権利と判断を行う司法の権限をともに否定するものであり、国連の自由権規約委員会をはじめとする条約機関も日本政府に対し、再審請求中の執行を行わないよう繰り返し勧告してきました。

遺族は再捜査を求めていた

 さらに、会見に出席された「被害者と司法を考える会」の片山徒有さんは、重要な情報を提供されました。片山さんは、犯罪被害者の支援のための活動の中で、この事件のご遺族に会ったことがあり、ご遺族の意見として、この事件が本当に犯人とされる三人だけの犯行であるか疑問があり、全容が明らかになっていないのではないかという意見を聞いたことがあり、今回の処刑がご遺族の意向に沿うものかどうかについても疑問が残ると述べたのです。
 過去の新聞記事を調べてみると、2004年2月5日付の西日本新聞の朝刊は、「遺族が再捜査要請 福岡市東区一家殺害 「共犯いるはず」 」という記事を報じています。
 この記事では、「福岡市東区の衣料品販売業松本真二郎さん=当時(41)=一家四人殺害事件で、松本さんのいとこの男性(38)が三日、捜査本部のある福岡東署を訪れ、『中国人三人だけの強盗目的の犯行とは到底考えられず、ほかにも共犯者がいるはず』として、再捜査を求める書面を提出した。書面は『容疑者不詳への告発状』としており、この男性ら親族四人が提出。
 『現金は約四万円しか奪われておらず、カメラなどの貴重品が残されていた。強盗に入ったのにわざわざ松本さんを待ち伏せして殺害するのは不自然』などと指摘している。男性は『事件には不明な点が多く、遺族が納得するまで捜査を続けてほしい』と話した。
 同署の安部勝副署長は『捜査は全力を尽くしている。告発状として受理するかどうかは内容を検討した上で近く回答したい』としている。」とされていました。

 片山さんが指摘されたとおり、この事件のさらなる真相の解明のためには、魏巍(ウェイウェイ)氏の協力が必要だったはずです。共犯者がいるかもしれないという理由で、遺族が再捜査を求めている状況での執行は極めて異例です。処刑がご遺族の意向に沿うものだったか、明らかにされる必要があると感じます。

今こそ、国際社会との対話を始めよう

 私たちの声明にも書きましたが、「2020年の東京オリンピック・パラリンピックと国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)に向け、日本に対して世界の注目が集まる中で行われた今回の死刑執行は、死刑制度が人権問題であることを否定する、現政権の姿勢を如実に示している。」といえるでしょう。
 我々は、このような度重なる死刑執行にも決して屈せず、来年日本において国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)が開催される機会に、これまで以上に国際社会と連帯し、日本政府・法務省に対して死刑の執行の停止と死刑廃止に向けた具体的な検討を直ちに開始するよう粘り強く求めていきたいと思います。

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