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2017年6月28日

海渡雄一弁護士が『戦争する国のつくり方』を出版しました

弁護士 海渡雄一

事務所の50周年を記念して、彩流社という出版社から『戦争する国のつくり方-「戦前」を繰り返さないために』を出版しました。

この本は、私(海渡)自身が、脱原発、秘密保護法の廃止、共謀罪創設反対などの活動に取り組み、皆さんと対話する中で、考えてきたことをまとめた本です。そして、安倍政権の下で進められている一連の法制度の改変が、日本を、戦争できる国に変えるために行われているのではないかという、深刻な疑念を、戦前の歴史と法制の歩みと比較する作業を通じて、裏付けようとしたものです。

なぜ、日本は中国やアメリカと戦争をしたのか。無謀な戦争に反対した人はいないのか。反対することはなぜ、どれほど困難だったのか。このような問いに正確に答えるためには、戦争を促進した法制度の構造、システムを知る必要があると思います。戦争は軍隊と司令官だけで遂行できるわけではありません。

この本では、戦争を遂行しようとする国の体制を法制度の面から比較・考察しています。戦争を始め、これを遂行するには、次のような一連の法・行政制度が必要です。そして、戦前の法制度と安倍政権のめざす戦争法制、戦争を行う主体を定め、(大本営→国家安全保障会議)、戦争に反対する勢力を無力化する治安法制が整備され、戦争に反対する諸勢力が非合法化・あるいは活動を大きく制限され(治安維持法→新共謀罪)、一般国民を戦争に協力させるための、思想・道徳の徹底のための教育がなされ、(教育勅語・軍事教練・靖国神社→日の丸君が代強制・道徳教育)、戦争のためにすべての物質的・社会的資源を動員することのできる法制度が整備され、(国家総動員法、徴兵制度→有事法制・自民党改憲草案国家緊急権条項)、戦争の準備の過程と戦意の高揚のために不都合な情報は隠ぺいできる情報管理体制を確立し、(軍機保護法・国防保安法→特定秘密保護法)、国民を戦争に誘導する情報が選別されて提供されるような報道の統制がなされ、市民が相互に監視し、国家が直接市民を監視できるシステム・仕組みが整備されることなどが必要です。ここにあげた戦前の制度ついては、それぞれ多くの研究が蓄積されていますが、これらを統一的に説明した分析はほとんどありません。歴史学の専門家でもない私が、この本を書いたのは、安倍政権の作ろうとしている新たな法制度に反対する運動のただ中で活動している者だからこそ見えてくる戦争する国の制度の全体像を、ラフでもよいから書き留めておきたいと考えたからです。この本は、若い世代の皆さんにこそ読んでいただきたいと思います。

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